はじめに
「2021年初夏」
咲くカフェの庭から距離にして20mほどの場所にある民家、大子町大子414-7 / 旧・小林邸。何年か前に当時住んでいたお年寄りの方が他界し、空き家となっていたその建物を解体するという噂がチラホラと出ていた。
ただ、その建物を引き継ぎ現所有者となっていた娘さんは、大子を離れているらしく、近所の人に聞いても、連絡先もどこに住んでいるかも不明であった。
そんなある日、解体業者の社長だという男性が、突然、咲くカフェに挨拶に来たのだ。
「今週から工事を始めます。」という、解体開始のほんの5日前。
そもそも、そこまで工事の影響がない位置に建つ「咲くカフェ」に、業者さんがわざわざ挨拶に来た理由というのが、咲くカフェがスタッフ用に借りていた駐車場であったのだ。
解体予定の建物は道路に面していない奥まった位置にあり、そしてその道路側にある土地こそが、まさに咲くカフェスタッフ用駐車場だったのだ。
つまり解体工事をするのに「期間中、廃材を搬出するために使用させてもらえませんか?」ということであった。
偶然にも運命的にも訪れた出会い。
すかさず頭の中に浮かんだ。
「解体業者さんだったら所有者の方に連絡が取れる!」
そしてその場で社長さんにすかさず伝えた
「あの建物を壊すのはもったいないです。所有者さんと連絡を取らせてもらえませんか??」
解体の協力の依頼をしに来たはずなのに、まさかの解体を止める話のカウンターを食らったような業者さんであったが、、、
「分かりました。その話を伝えてこちらから連絡をするように伝えます。」と快く受け入れてくれたのだった。
ほんの1日半でこの家のオーナーとなったのだ。
素直に伝えた一言から、つなげた歴史。
古民家の歴史を背負い、「咲くカフェ Flower」へと生まれ変わる道が見えた瞬間であった。
「店舗計画」
建物をいただくことになった後、間もなくして家の鍵を受け取った。
いよいよドキドキの初めての内部潜入。自分の家なのに内部を見たことがないという・・・。
築100年程の古民家ではあるのだが、壁から天井、様々な場所までかなり手直し?修復?されているようで、入った瞬間に「家だ」と言葉を漏らしたように、表面は「普通の家」という印象。
レトロな時代感のある作りの雰囲気と、何年も空き家だったという事実、そしてずっと締め切られていた溜まった空気、半開きの押し入れや、昔ながらの鏡台、、、
・・・一人での内覧は怖かったのを覚えている。。。
そして建物を壊した部分が全て庭ではなく、屋根付きテラスにするといいかも。
じゃあ、このラインで壊して、そこからこの辺りまでテラスにすると・・・。
そしてさらに家の中を歩き回る。
元々あったキッチン当たりの一角、西側の辺りをキッチンにして・・・
ここの壁を抜いて、この辺も全部抜いて・・・
ここの柱のラインでカウンターにして、フロアがこの一帯全てになって・・・
このお風呂場がトイレになるとちょうどいい。
イメージは次々と湧いてきた。
「計画実行」
元は古い家なのだが、とにかく昔の土の壁の表面には安っぽい模様付べニアみたいなのが貼られ、昔の天井を覆い隠すように合板の天井が貼られ、とにかく、べニアと模様シートみたいな物で家中覆われた状態で、とにかく壊して剥がす作業が続いた。
作業を進めながら絵を描いていく中で、補助金は絶対に取らないと厳しいなと思った。
そこで考えた結果、補助金額の規模も大きく、事業自体も補助対象内容と合っている経済産業省の「事業再構築補助金」にチャレンジすることにした。
まずは大工さんと建築士さんに相談し、見積もりを出してもらう。
僕の頭の中に浮かんでいる店舗設計を、建築士さんに現場で説明したり、テラスに関してはイメージ画を作り、そして実際に図面に起こしてもらった。
それがこちら。
その反面大変なのは補助金申請。
各種ある補助金の中でも、最高レベルにハードルが高く、素人の申請では難しいとも言われている「事業再構築補助金」。
上がってきた見積もりを含め、事業計画書を作成し申請。あとは結果を待つのみ。
そして2022年のある日、常陽銀行の担当者さんから1本の電話が。。。
「社長!採択事業リストに入ってましたよ!」
見事採択!!!
「きたーーーっ!」
「咲くカフェタウン」の空き家活用プロジェクト第1段「咲くカフェ Flower」の事業が動き始めたのでした♪
「ベーカリーカフェという選択」
今回、咲くカフェタウンの空き家活用第1弾を「ベーカリーカフェ」という選択にしたのはなぜか?
将来図的には「咲くカフェタウン」として、空き家等を活用した様々なお店や施設が並ぶような一帯=タウンにしていきたいイメージはあるのだが、現在はまだそこまでの規模ではない。
今はまだ種火の様な物。
そこで、個店として、、、また、咲くカフェ+「新店舗」として、集客しやすいのは「飲食」であると考えていた。
そこでどういった形態の飲食にするか?何屋さんにするか?
「同じ様な飲食店を既存店の近くに作って、お客さんの取り合いになっちゃうんじゃないの?」っていう発想は昔の人。
決してたまたま通りがかった人を呼び込む様なビジネスをしている訳ではないのであるからこそ。
僕は逆に同業種のお店が並ぶことによって相乗効果の力が加わると思っている。
そこですぐに浮かんだのが「ベーカリーカフェ」であった。
ベーカリカフェこそ、咲くカフェに隣接するお店として最高のパフォーマンスを期待できると直感した。
簡単にその利点を挙げてみる。
- 「カフェ」で調理提供するパンを自社製造化しブランド力の向上。
- 「カフェ」に来た人が「ベーカリー」にも寄るのは必然的。
- 「ベーカリー」にパンを買いに来た人が、「カフェ」利用。
- 「カフェ」の満席時に「ベーカリー」利用により満足度の低下を防げる。
- 「カフェ」の様にしっかり座ってフルサービスを受けるほど、ゆっくり座りたくない人が「ベーカリー」の事前会計スタイルの軽めのイートイン利用。
- 店舗が近いからこそ、パンに限らず食材・仕込み・販売スタイル(咲くカフェでは売りづらい商品もベーカリーのカウンター販売なら売りやすい)など、お互いで共有・分担化でき効率の良い運営にもつながる。
などなど、共存・共栄していく最初の店舗としてはこの上ない存在であると考えた。
「Flowerに掛ける想い」
2017年「咲くカフェ」を作った時は、全てが初めてのことで、もちろん事業収入が無い上で借金だけをして始める以上、やりたい事をやるというよりかは、やれる範囲でやるといった状態でスタートしたんです。
ある意味、妥協しながらスタートして、運営が周り始めてからちょこちょこと手を加えてきたって感じで。。。
それでも全てをパーフェクトにすることは今更できない。
でもこの「咲くカフェ Flower」はほぼ妥協無し。
(業者さんの工事段階で、すでに咲くカフェを作った時の予算を大きく上回っていますw)
駐車場の整備から庭木の植栽、庭の塀や柵も作りアンティーク風アーチ、ブロック塀も漆喰風塗料で仕上げ、外壁も自分で何度も試して調合したブルーグレーの漆喰風塗料で全て左官仕上げにし、飾りの木枠も設置してもらい、それをダメージ塗装加工。
屋根は悩んだ末の施工業者さんも驚きの「ホワイト」。
店内に入ればエントランスのフレンチアンティークドアに真鍮金具、主な建具は全て木製。様々な部分に真鍮を使い、新らしく作った物には全てダメージ加工。
チェアやテーブルもオリジナルサイズ、オリジナルデザインでオーダーメイド。
店内壁も自ら塗った3色使いのシャビーな板で全て貼った。
とにかくデザイン的な部分に妥協は無く仕上げ尽くす。
咲くカフェが生み出す最高のパフォーマンスを生み出すために!
古民家再生・空き家活用のすごい見本系を作って見せる!
そしていつも言っている「商品を売る」のではなく、エンターテイメントを提供する。
それを改めて体現する。
最後に「Flower」の由来。
店名を考えるのは好きな咲くカフェ LEMSだが、ベーカリーカフェの名前だけはなかなか浮かばなかった「咲くカフェ ベーカリー」みたいな当たり前の名前にはしたくなかったし、捻ろうとしてもピンとくるものが出てこなかった。
そんな時、小麦粉ってフラワー(Flour)だよな? 発音ってもしかして「Flower」と同じかな?と調べてみたら、「発音は同じ」「元々昔は小麦粉も「Flower」と表記していた。(そして意味も「花・華」であり、「穀物の最良の部分」を意味していた)」と!
「Flower」いいじゃん!素敵じゃん!!
咲くカフェ LEMSも元々花が好きではあった。
それはもしかしたら花が好きで、花のアレンジメント等もやっていた母の影響かも知れない。
家族で花が好きというか常に花は身近にあった。
咲くカフェでもエディブルフラワーを育てたり、手に入る時は買ったりし飾りによく使っている。
まさにすごくピッタリでお洒落感もバッチリで最高の名前。
そしてその瞬間ふと思った。
エディブルフラワーを使ったパンやスイーツを主役にしていって、実際にも「Flower」を感じるベーカリーにしたら個性も出て、ブランディングにもなり、お花がふんだんに乗ったプリンとか看板商品的なお土産物も作れそう♪
最高じゃん!
名前が決まるとロゴは早い。